がん:骨髄異形成症候群のレナリドミドに対する応答性はカルシウムとカルパインに依存する経路によって決まる
Nature Medicine 22, 7 doi: 10.1038/nm.4127
第5染色体長腕部欠失〔del(5q)〕を有する骨髄異形成症候群(MDS)患者はレナリドミド(LEN)による治療に応答する割合が高く、またLENの分子標的がセレブロン(CRBN)であることが最近突き止められた。だが、LENがMDSクローンを排除する細胞内機序はまだはっきりしていない。本論文では、MDS細胞株の1つであるMDSLでLEN応答性を仲介する遺伝子調節ネットワークの詳細を、RNA干渉スクリーニングによって明らかにしている。我々は、カルシウム代謝に関連付けられているGタンパク質共役受容体をコードしているGPR68が、LENに対する感受性の調節を行っている遺伝子の最有力候補であることを突き止めた。LENは、IKZF1(IKAROS family zinc finger 1)を介してGPR68の発現を誘導し、その結果として細胞質内カルシウム濃度が上昇して、カルシウム依存性カルパインの1つであるCAPN1が活性化された。LENが誘導するこれらの反応はMDS細胞や急性骨髄性白血病(AML)細胞でのアポトーシス誘導に必要だった。対照的に、GPR68の欠失、あるいはカルシウムレベル上昇やカルパイン活性化の阻害は、LENが誘導する細胞毒性を抑制した。さらに、CAPN1の内在性阻害物質であるカルパスタチン(CAST)の発現はdel(5q) MDS患者のLEN応答性と相関しているが、カルパスタチンをコードするCASTはdel(5q) MDSでは欠失している。CASTを除去すると、LEN抵抗性の非del(5q) MDS細胞やAML細胞のLEN応答性が回復した。このことは、del(5q) MDS患者のLEN投与に対する優れた応答性の説明となる。今回の研究は、CRBNとIKZF1を介して作用するLENが、MDSおよびAMLでは細胞毒性をもたらし、この毒性はカルシウムおよびカルパインに依存する経路に左右されることを明らかにしている。