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筋再生:マウスでβ1インテグリンシグナル伝達を標的とすることは老化筋肉や萎縮した筋肉の再生を強化する
Nature Medicine 22, 8 doi: 10.1038/nm.4116
幹細胞とその微小環境、すなわちニッチと間の相互作用は、幹細胞の維持と機能に必須である。骨格筋幹細胞とされる衛星細胞(SC)のニッチについての我々の知識はまだ不完全である。今回我々は、β1インテグリンがニッチに不可欠の分子であり、SC恒常性を維持していること、また再生時にこの幹細胞プールの増殖と自己複製を維持することを示す。我々はまた、β1インテグリンがSCの強力な増殖因子である繊維芽細胞増殖因子2(Fgf2)と協調し、これらに共通の下流エフェクターであるマイトジェン活性化プロテイン(MAP)キナーゼErkとプロテインキナーゼB(Akt)を相乗的に活性化することを示す。老化マウスのSCではβ1インテグリン活性が変化していて、Fgf2非感受性であることは注目される。モノクローナル抗体によってβ1インテグリン活性を増強すると、Fgf2感受性が回復し、実験的に誘導した筋傷害後の再生が改善される。同様のモノクローナル抗体投与は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーのモデルであるmdxマウスで、萎縮した筋肉の再生と機能を増強する。従って、β1インテグリンはSCニッチを感知し、Fgf2に対する応答性を維持していて、このインテグリンは幹細胞ニッチが損なわれた筋の病的状態を治療する際の標的候補となる。