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神経変性疾患:TDP-43のミトコンドリア局在を阻害すると、その神経毒性が遮断される
Nature Medicine 22, 8 doi: 10.1038/nm.4130
TARDBP(TAR DNA-binding protein 43、別名TDP-43)の遺伝学的変異は、筋委縮性側索硬化症(ALS)を引き起こし、TARDBPにコードされるTDP-43の細胞質での存在量増加は、多様な神経変性疾患でニューロン変性を示す顕著な組織病理学的特徴である。しかし、TDP-43がALSの病態生理に関与する分子機構はまだ明らかになっていない。今回我々は、ALSあるいは前頭側頭型認知症(FTD)の患者で、ニューロンのミトコンドリアにTDP-43が集積することを見いだした。これらの疾患に関連する変異は、TDP-43のミトコンドリア局在を増加させる。ミトコンドリアでは、野生型(WT)および変異型TDP-43は、呼吸鎖複合体IサブユニットのND3とND6をコードしてミトコンドリアで転写されるメッセンジャーRNA(mRNA)に選択的に結合してこれらの発現を障害し、呼吸鎖複合体Iの分解を特異的に引き起こす。TDP-43のミトコンドリア局在を抑制すると、WTおよび変異型TDP-43が誘導するミトコンドリア機能不全とニューロン喪失が起こらなくなり、変異型TDP-43を導入したトランスジェニックマウスの表現型が改善される。従って、我々の結果はTDP-43の毒性とミトコンドリアの生体エネルギー学的性質を直接関連づけたもので、TDP-43のミトコンドリア局在を標的とすることは神経変性の有望な治療法となると考えられる。