Letter
HIV:欠損型プロウイルスはHIV-1急性感染の際に迅速に集積する
Nature Medicine 22, 9 doi: 10.1038/nm.4156
抗レトロウイルス療法(ART)はウイルス複製を臨床的に検出不可能なレベルにまで抑制するが、ヒト免疫不全ウイルスI型(HIV-1)は、免疫系もしくはARTによって標的とされない潜伏型となってCD4+ T細胞中で生存を続ける。この潜伏リザーバーは、HIV-1感染患者の治癒に対する重大な障壁となっている。患者の多くは慢性感染の間にARTを開始し、この状況下ではほとんどのプロウイルスに欠損がある。しかし、HIV-1急性感染時の欠損型プロウイルスの集積と存続の動態についてはほとんど知られていない。今回我々は、欠損型プロウイルスは感染の最初の数週間以内に急速に集積し、全プロウイルスの93%超を占め、どれだけ早くARTを開始したかは関係ないことを示す。感染のさまざまな段階で治療を受けたHIV-1成人患者に由来するほぼ完全長のプロウイルスゲノムを不偏的な方法を用いて増幅することにより、ARTの早期開始はリザーバーのサイズを制限するが、プロウイルスの全体像には大きな影響がないことが明らかになった。この解析により、プロウイルス集団の構成についての我々の知識を修正することができ、感染の早期あるいは後期に治療を受けた患者の真のリザーバー・サイズを推定できるようになった。さらに、リザーバーのサイズを測定する一般的なアッセイ法は、遺伝的損傷を受けていないプロウイルスの存在数を使って決定されるリザーバー・サイズとは相関しないことも明らかにした。これらの知見は、将来のHIV-1治癒戦略の適切な検討を行うために克服しなければならない障害を明らかにしている。