Editorial 科学を守ろう 2017年1月1日 Nature Medicine 23, 1 doi: 10.1038/nm.4270 米国ではトランプ大統領の就任式が近づくにつれ、統治や政策についてだけでなく、科学研究の将来についても大きな変化が予測されるようになり、特に生物医学分野では不確実性の高まりに不安感が広まっている。共和党の議員の多くは、胚性幹細胞や胎児組織を使う研究や妊娠中絶に反対意見を表明しており、研究予算の削減どころか研究自体の禁止が懸念されている。すでに実施が法律で決まっている大規模な脳研究プロジェクトのブレイン・イニシアティブやがん撲滅ムーンショットイニシアティブはおそらくこのまま施行されるだろうが、薬剤認可を促進するための条項を本来とは異なる目的に使って認可要件が緩和されることが、研究者や消費者の側からは心配されている。このような法律の解釈や履行はFDAのヘッドによって大きく影響されると予想されており、こうしたポストには党派に関係なく、科学や医療に関する十分な識見を備えた人物が選ばれることを望む声が高まっている。このような大型プロジェクトだけでなく、思いがけない成果につながることも多い小規模研究についても、NIHの助成が続くかどうかが危ぶまれている。前例のない不確実性のただなかにある現在、生物医学研究者たちは科学研究の研究費助成、政策や規制の決定は科学的根拠に基づいてなされるように強く主張すべきである。科学と医学の進歩にとって必要なのは、政策や選挙公約、個人の宗教的信条に基づく観念論的な人選ではなく、自由で開かれた科学的な検討と議論による人選なのだ。 Full text PDF 目次へ戻る