肥満:GFRALはGDF15の受容体であり、リガンドのGDF15はマウスや非ヒト霊長類で体重減少を促進する
Nature Medicine 23, 10 doi: 10.1038/nm.4392
GDF15(growth differentiation factor 15)はトランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)ファミリーの遠縁のメンバーで、25 kDaの二量体の形で血中を循環する分泌タンパク質である。ヒトでは、GDF15の増加は体重減少と相関し、GDF15を肥満マウスへ投与すると体重減少が見られ、この減少は(少なくとも部分的には)食物摂取量の低下によって起こる。GDF15が体重を減少させる機構はよく分かっておらず、それはGDF15の同族受容体が不明であるためである。本研究では、組換えGDF15が高脂肪食を与えられたマウスや自然発生的肥満の非ヒト霊長類で体重減少を引き起こすことを示す。さらに、GDF15はGFRAL(GDNF family receptor α-like)に高い親和性で結合することが分かった。GFRALは、TGF-βスーパーファミリーの別のクラスのリガンドに結合する受容体と遠縁の関係にある。Gfralはマウスやヒトの脳の最後野と孤束核のニューロンで発現しており、この受容体を遺伝学的に欠失させると、GDF15はマウスで食物摂取量および体重の減少を引き起こせなくなる。また、GFRAL欠損マウスでは、食餌誘導性の肥満やインスリン抵抗性が悪化するので、この受容体は代謝の恒常性維持に役割を担うと考えられる。さらに、GDF15によって誘導される細胞内シグナル伝達には、GFRALとその共受容体RETとの相互作用が必要であることが明らかになった。我々のデータは、GFRALが体重のこれまで知られていなかった調節因子であり、GDF15の代謝への影響を仲介する真の受容体であることを明らかにしたもので、この結果によりGDF15を肥満の薬理学的治療法の候補としてさらに包括的に評価することが可能になった。