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レット症候群:マウスでのMeCP2のビオチンタグ付けから明らかになったレット症候群トランスクリプトームについての状況的知見
Nature Medicine 23, 10 doi: 10.1038/nm.4406
MECP2に生じた変異は、X連鎖性の神経学的疾患であるレット症候群(RTT)を引き起こす。この症候群は、神経発達過程の重大な段階の退行的消失や後天的な精神運動障害を特徴とする。しかし、脳の細胞の不均一性が、MECP2変異がRTTに関わる仕組みの解明を妨げている。今回我々は、Cre-inducibleな方法を開発して、マウスでMeCP2に細胞種特異的なビオチンタグ付けを行った。よく見られるRTT関連変異(T158MおよびR106Wをコードする)を持つ一連の対立遺伝子ノックインマウスとこの手法を組み合わせることで、興奮性および抑制性の皮質ニューロンでRTTに関連する核トランスクリプトームの選択的プロファイリングが可能になった。遺伝子発現変化のほとんどが、RTTに関連する各変異および細胞種におおむね特異的であることが分かった。発現レベルが低く、特定の細胞種に特に多量に存在する遺伝子はMeCP2変異によって発現が選択的に破壊され、発現増大や発現減少が見られる遺伝子は異なる機能カテゴリーを反映している。MeCP2変異型ニューロンでの細胞内RNA解析からはさらに、長鎖遺伝子群の新生転写が低下していることが明らかになり、細胞レベルで広範な転写後補償が起こっていることも見いだされた。我々は雌のRTTモデルでのX連鎖性細胞モザイクの問題を克服し、隣接する野生型および変異型のニューロンの間に異なる遺伝子発現変化があることを突き止めた。これらの結果はRTTの病因についての状況的な手掛かりをもたらすもので、個別化された治療的介入の妥当性を裏付けている。