心筋梗塞:IRF3とI型インターフェロンは心筋梗塞への致死的応答を促進する
Nature Medicine 23, 12 doi: 10.1038/nm.4428
インターフェロン制御因子3(IRF3)やI型インターフェロン(IFN)は感染やがんを防御するが、IRF3活性化やI型IFN産生が過剰になると、アイカルディ・ゴーシェ症候群や乳児発症性STING関連血管炎(SAVI)などのような自己炎症性疾患が引き起こされる。心筋梗塞(MI)は炎症を引き起こすが、MIに関連する炎症の主要なドライバー分子は明らかになっていない。本論文では、心臓での虚血性細胞死とマクロファージによる細胞片の取り込みが、IRF3やI型IFN産生の活性化によってMIに対する致死的応答を促進することを示す。マウスでは、梗塞を起こした心臓と起こしていない心臓から単離した4215の白血球の単一細胞RNA-seq解析により、心臓マクロファージに分類されるインターフェロン誘導性細胞(IFNIC)のまた別の集団でMIによってIRF3–インターフェロン軸の活性化が引き起こされることが分かった。環状GMP–AMPシンターゼ(cGAS)、そのアダプターであるSTING、IRF3、あるいはI型IFN受容体のIFNARを遺伝的に欠損させたマウスは、インターフェロン誘導遺伝子(ISG)の発現が障害され、IRF3、あるいはIFNARを欠損するマウスでは、対照マウスに比べてMI後の生存が改善した。IRF3依存性シグナル伝達を妨げると、炎症性サイトカインやケモカインの心臓での発現低下、心臓への炎症細胞の浸潤減少とともに、心室拡張の減弱や心機能の改善が引き起こされた。同様に、MI後にIFNAR中和抗体をマウスに投与すると、インターフェロン応答が起こらなくなり、左心室機能不全や生存が改善した。これらの結果は、IRF3やI型IFN応答がMI後の心保護のための治療標的候補であることを明らかにしている。