Editorial がんの免疫療法は両刃の剣 2017年2月1日 Nature Medicine 23, 2 doi: 10.1038/nm.4286 免疫療法は、黒色腫やリンパ腫などの複数のがんで、これまで見られなかった有効性を示しており、他の多数のがんについても臨床試験が始まっている。免疫療法は抗体、ワクチン、改変リンパ球など治療に使われる手段はさまざまで、標的、投与量、どんな治療法を併用するかといった点でも多様である。こうした多様性にもかかわらず、免疫療法は免疫応答の刺激という作用機作が共通している。そのため、これは意外ではないが、有害な副作用も共通していて、免疫に関連している。がん免疫療法のリスクとなるこのような副作用は非常に治療しにくく、研究も不十分である。例えばイピリムマブの副作用は、消化器、肝臓、皮膚の炎症だが、弱いものから致命的となるものまで程度はさまざまである。この例からも分かるように、免疫療法が誘発する有害な免疫作用の難しい点は、発症時期、重篤さ、期間、どの組織が影響を受けるかなど、重要な性質が大きくばらつく点である。もし副作用の原因がはっきりしていれば、対処はもっと容易になるだろう。このリスク・ベネフィット比が高い治療法については、各分野が協力して、情報を共有し、解析を行わなくてはいけない。基礎と臨床のデータベースを備え、複数のセンターを持つ研究ネットワークがあれば、多様な現象の統計的解析に力を発揮するだろう。化学療法に関しては、数十年にわたる研究によって最適の化学療法を選択し、副作用に対処し、予後を予測する手段が生まれた。免疫療法はまだそこまで達していない。がんは複雑な生物学的過程であり、それに対抗する生物学的過程、つまり免疫系も同じような汎用性を持ち多機能である。免疫療法が引き起こす有害な免疫応答という、この複雑な生理的連鎖反応の機構解明を進めるには、各分野がデータ、アイデア、情報リソースを共有し、連携することが不可欠である。 Full text PDF 目次へ戻る