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共生微生物相:多数の身体部位での乳幼児マイクロバイオーム群集の構成と機能の成熟、および分娩様式との関係

Nature Medicine 23, 3 doi: 10.1038/nm.4272

ヒトのマイクロバイオーム群集は、分類学的、メタゲノム的、また代謝的な多様性によって特徴づけられる。このような多様性は身体部位によって差異があり、ヒトの生理に影響を与えている。しかし、個々の身体ニッチに存在する微生物群集が、出生後に独特の分類学的および機能的シグネチャーを獲得する時期と獲得の仕組みについては十分には解明されていない。我々は今回、多数の身体部位にわたって新生児期および乳幼児期初期の微生物相の分類学的な構成および代謝機能と思われるものを明らかにし、分娩様式がもたらす影響とその共創始者候補あるいは修飾因子候補を評価した。妊娠第3期初期の妊婦のコホート(n = 81)に対して、分娩後6週間にわたって縦断的試料採取をする前向き研究を行った。さらに、これとマッチする横断的コホート(n = 81)に対しても、分娩時に一度横断的試料採取を行った。便、歯肉、鼻孔、皮膚、膣などの多数の身体部位からの試料は、母親と乳児の対それぞれに対して採取された。また、16S rRNAをコードしている遺伝子について、全ゲノムショットガン法により塩基配列の解読と解析を行い、新生児および母親の微生物相の組成と機能を調べた。新生児の微生物相とそれに関連する機能経路は、分娩時には調べた身体部位の全てにわたって比較的均一であることが分かったが、胎便は注目すべき例外であった。しかし、分娩後6週までに、乳児の微生物相の構造と機能は大規模に拡大・多様化し、身体部位が微生物群集の構成やその機能的キャパシティの主要な決定因子となった。新生児(分娩直後)の微生物相群集構造には、身体の一部の部位で帝王切開による分娩と関連するわずかなばらつきが見られたが(口腔歯肉、鼻孔および皮膚、R2 = 0.038)、新生児の便についてはこのようなばらつきは見られず(胎便、Mann–Whitney P > 0.05)、分娩様式が異なっても、微生物群集の機能に違いは認められなかった。生後6週の乳児では、微生物相の構造と機能は拡大して多様化し、身体部位ごとの特異性がはっきり見られるようになったが(P < 0.001、R2 =0.189)、経腟分娩あるいは帝王切開で出生した乳児の間で群集の構造と機能に識別できるほどの差異はなかった(P = 0.057、R2 =0.007)。我々は、乳児の微生物相は生後6週間以内に大きな再編成を起こし、その変化は分娩様式ではなく、身体部位によって主に進められると結論している。

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