Technical Report
ゲノム解析技術:ホルマリン固定パラフィン包埋標本からの単一細胞全ゲノムコピー数プロファイリング
Nature Medicine 23, 3 doi: 10.1038/nm.4279
腫瘍では、かなりの割合が遺伝子型の異なる複数のがん細胞亜集団で構成されている。こうした腫瘍内の遺伝的不均一性は、高精度医療(precision medicine)を進める際の大きな難問となっている。単一細胞ゲノミクスは、腫瘍のバルク分析では明確にできない細胞系譜を追跡したり、隠れている遺伝的多様性を明らかにしたりすることで、複雑ながん細胞混合体としての腫瘍を解明するための強力な手法となる。ホルマリン固定では化学的変化が生じるため、単一細胞ゲノミクスで扱える対象はいまだに、新鮮な標本か、急速冷凍された標本にほぼ限定されている。今回我々は、ホルマリン固定パラフィン包埋された臨床腫瘍標本から得た単一細胞核の全ゲノムコピー数プロファイリングを行うためのロバストで正確な手法の開発とその妥当性検証について報告する。我々はここで述べた単一細胞塩基配列解読法を使って、非浸潤性乳がんから浸潤性乳がんへのプログレッションを調べた。その結果、非浸潤性乳管がんが診断時に腫瘍内の遺伝的不均一性を示し、こうした病巣がさまざまな進化過程を経て浸潤性乳がんへと進行する可能性が明らかになった。