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がん治療:がんの種類に特異的なSPOP変異体はBETタンパク質分解とBET阻害剤感受性に相反する影響を及ぼす
Nature Medicine 23, 9 doi: 10.1038/nm.4372
1つのがんドライバー遺伝子内に頻発する変異は、同じような薬剤応答を引き起こすと一般に考えられている。子宮内膜がんと前立腺がんでは、ユビキチンリガーゼアダプターであるSPOPの基質認識ドメインに影響を及ぼすさまざまなミスセンス変異が頻発することが、がんゲノムの研究により見つかっている。このような変異のがん治療薬への影響はまだ完全には解明されていない。我々は、子宮内膜がんで見られるSPOP変異によって生じたユビキチン全体像の変化について解析を行い、BETタンパク質群のBRD2、BRD3、BRD4がSPOP–CUL3複合体の基質であり、子宮内膜がんで見られるSPOP変異体によって選択的に分解されることを突き止めた。この結果としてBETタンパク質量は減少し、がん細胞はBET阻害剤に対して感受性となった。これとは逆に、前立腺がん特異的なSPOP変異ではBETの分解が障害され、がん細胞は薬理学的阻害に抵抗性を示すようになった。これらの結果は、同じドメインに位置する変異が薬剤感受性に対してまったく逆の影響を及ぼすという、がんゲノムにおけるパラドックスを明らかにしている。つまり、SPOP変異を保持する子宮内膜がんでのBET阻害剤使用には合理的根拠があるが、同じ変異を有する前立腺がんでは使用の根拠が得られないことが明らかになった。