微生物学:造血幹細胞移植における真核生物腸内ウイロームの変化:腸の移植片対宿主病についての新たな手がかり
Nature Medicine 23, 9 doi: 10.1038/nm.4380
ヒトの健康に細菌マイクロバイオームが担う役割は大きな関心を集めているが、ウイルスマイクロバイオーム、すなわちウイロームについては研究が進んでいない。炎症性腸疾患の患者や固形臓器移植を受けた患者でのウイローム動態は以前に調べられているが、同種異系の造血幹細胞移植(HSCT)や、腸管での移植片対宿主病(GVHD)ではまだ調べられていない。今回我々は、メタゲノミクスの手法を用いて、44人のHSCT移植者で長期的な腸内ウイロームの特性を明らかにした。移植後に、ウイルスの「大量発生」が起こることが明らかになり、脊椎動物ウイルス配列の全体的な割合に有意な増加が見られた(P = 0.02)。腸管GVHD患者では、移植を受けていない対照に比べて、持続感染性のDNAウイルス(アネロウイルス、ヘルペスウイルス、パピローマウイルスおよびポリオーマウイルス)の検出率(P < 0.0001)と配列数(P = 0.047)の長期にわたる増加が観察され、ファージの多様性はそれにともない減少していた(P=0.01)。ピコビルナウイルスは18人(40.9%)の患者から検出され、移植前と移植後1週間以内の方が、その後の時点よりも検出頻度が高かった(P = 0.008)。時間依存的コックス比例ハザードモデルでは、ピコビルナウイルスは重篤な腸内GVHD発症を予測し〔ハザード比2.66、95%信頼区間(CI)=1.46~4.86、P = 0.001〕、2つのGVHD重篤度マーカーであるカルプロテクチンとα1-アンチトリプシンの糞便中レベルの上昇との関連を示した。これらの結果は、HSCT後の経過時間に伴って脊椎動物ウイルス感染が漸増的に増加することを示しており、またピコビルナウイルスと移植後初期GVHDとの予想外の関連を明らかにしている。