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がん治療:T細胞の機能不全や排除の特徴はがん免疫療法への応答を予測する
Nature Medicine 24, 10 doi: 10.1038/s41591-018-0136-1
免疫チェックポイント阻害(ICB)によるがん治療は、長期にわたる臨床効果をもたらすことがあるが、治療に応答する患者は一部のみである。我々は、ICBに対する応答を予測するために、腫瘍が免疫を回避する2つの重要な機構、すなわち細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の浸潤レベルの高い腫瘍で見られるT細胞の機能不全の誘導と、CTLレベルの低い腫瘍で見られるT細胞の浸潤防止をモデル化する計算手法であるTIDE(Tumor Immune Dysfunction and Exclusion)を開発した。我々は大規模な腫瘍コホートを使い、腫瘍での各遺伝子の発現がCTL浸潤レベルと相互作用して、患者の生存に影響を及ぼす仕組みを検討することによって、T細胞機能不全のシグネチャーを突き止めた。また、免疫抑制性細胞の発現シグネチャーを用いて、腫瘍へのT細胞浸潤を排除する因子もモデル化した。TIDEは、この枠組みや、治療前のRNA-SeqプロファイルもしくはNanoString腫瘍発現プロファイルを用いて、第一選択治療である抗PD1療法あるいは抗CTLA4療法を受けた黒色腫患者の転帰を、PD-L1レベルや変異量などの他のバイオマーカーよりも正確に予測した。TIDEはまた、SERPINB9などの新しいICB抵抗性調節因子候補を明らかにし、免疫療法研究における有用性も実証した。