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結節性硬化症:結節性硬化症の遺伝学的改変ヒト皮質スフェロイドモデル
Nature Medicine 24, 10 doi: 10.1038/s41591-018-0139-y
結節性硬化症(TSC)は、TSC1あるいはTSC2遺伝子の変異によって引き起こされる多系統発達障害であり、これらの遺伝子産物であるタンパク質はmTOR1(mechanistic target of rapamycin complex 1)シグナル伝達の負の調節因子である。TSCの特徴的な病変は大脳皮質結節、すなわち皮質中の形態が異常で無秩序化したニューロンやグリアが存在する領域で、これはてんかん発生と関連付けられている。我々は結節細胞の発生起源を決定する目的で、ヒト多能性幹細胞(hPSC)でCRISPR–Cas9を用いてTSC1もしくはTSC2の遺伝子編集を行い、TSCのヒト細胞モデルを確立した。機能する対立遺伝子に条件的変異を起こしたヘテロ接合のTSC2hPSCを用いて、神経前駆細胞の増殖中に起こるモザイク性の両対立遺伝子の不活性化が、三次元皮質スフェロイドでの形態異常細胞の形成やグリア産生の増加に必要であることが明らかになった。我々の知見は、皮質結節形成の2ヒットモデルを裏付けており、発生段階で体細胞変異が起こるタイミングのばらつきが、TSCの神経学的症候における不均一性の一因であることを示唆している。