免疫:免疫経路は、ワクチンによるSIV感染防御の多数の機構を限定する
Nature Medicine 24, 10 doi: 10.1038/s41591-018-0161-0
承認されたワクチンのほとんどで、防御に相関する主要な因子は抗体だが、抗体による防御の機構は物理的な阻害から自然免疫の誘導を介した排除まで、広い範囲にわたる可能性がある。今回我々は、ワクチンによって誘導される抗体には顕著な機能的多様性が認められることを明らかにした。この多様性は免疫接種部位によって生じ、非ヒト霊長類でのSIV感染リスクの低下と関連している。筋肉内注射(IM)もしくはエーロゾル(AE)によるワクチン投与によって免疫を行い、他の全ての点では同一のDNAプライム–Ad5ブーストレジメンを用いて処理すると、同程度の防御レベルが観察された。しかし、感染リスクの低下は、IM投与ワクチンを受けた群ではIgGによって駆動され、抗体依存的で単球が仲介するファゴサイトーシスと関連していたが、AEを使って免疫された動物群ではワクチンによって誘発されたIgAによって駆動され、好中球が仲介するファゴサイトーシスと関連していた。従って、経路非依存的な関連因子は、ファゴサイトーシスを誘導するFcエフェクター活性がSIVからの防御に重要な役割を持つことを示しているが、このFc活性は免疫部位によって異なる自然免疫エフェクター細胞や抗体アイソタイプを介して誘導されるのかもしれない。さらに、同じ関連因子が、異なるIMカナリア天然痘プライム–タンパク質ブースト法(1回目の中程度の防御効果のあるヒトHIVワクチン治験で用いられたものと類似する)を用いる2回目の非ヒト霊長類ワクチン治験で、SHIV感染からの防御を予測した。これらのデータは、異なったワクチン接種経路と免疫計画によって誘起される直交関数的な液性免疫機構を明らかにしており、また複数の、おそらくは相補的な免疫関連因子の存在を示していて、これはHIV感染を防御するワクチンの合理的設計に役立つだろう。