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がん:後期段階の腫瘍は貧血と免疫抑制性の髄外赤芽球系前駆細胞を誘導する
Nature Medicine 24, 10 doi: 10.1038/s41591-018-0205-5
後期段階のがん患者で見られる免疫障害が抗腫瘍応答に限られないことは、ワクチン接種による防御力の弱さや感染への高い感受性によって実証されている。このような免疫障害は、化学療法によって誘導される好中球減少症のような、自然免疫の障害が主な原因と考えられてきたが、造血系および適応免疫に対する腫瘍の全身的な影響については十分に解明されていない。今回我々は、大きな腫瘍を持つ治療未経験マウスで、病原体に対するCD8+ T細胞応答の重度の欠如と関連する貧血を観察した。さらに、CD45+赤芽球系前駆細胞(CD71+TER119+、EPC)がロバストな免疫抑制細胞であることが突き止められた。CD45+ EPCは腫瘍増殖に関連する髄外造血によって誘導され、脾臓に蓄積して大集団となり、制御性T細胞(Treg)や骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)を数で上回るようになる。CD45+ EPCのトランスクリプトームは、MDSCのそれと極めてよく似ており、CD45+ EPCを介した免疫抑制の基盤となる主要な機構は、MDSCと同様、活性酸素種の産生である。免疫抑制性CD45+ EPC集団は貧血の見られるがん患者でも検出された。これらの知見は、進行がん患者でよく見られるT細胞応答障害に関与すると考えられる免疫抑制細胞の主要な集団を明らかにしている。