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幹細胞:遺伝的に改変された造血幹・前駆細胞のヒトでの自家移植後の動態

Nature Medicine 24, 11 doi: 10.1038/s41591-018-0195-3

造血幹・前駆細胞(HSPC)は、血液細胞の極めて多様なプールを一生にわたって生成・維持する役割を担っている。臨床的には、同種異系の健康なドナー由来のヒトHPSCの移植、もしくは遺伝子を修正した自己HSPCの注入は、先天性あるいは後天性の疾患によって引き起こされる血液細胞産生異常を実際上回復させることができる。しかし、実験方法および倫理的に制約があるため、ヒトHSPCの研究は主にin vitroでの解析、あるいは異種移植モデルに限られており、HSPCのin vivoでの活性は、ヒトではこれまで、他と比べて研究が進んでいなかった。今回我々は、自己HSPC移植を用いてレンチウイルス遺伝子治療を受けた6人の患者の追跡調査を最大5年にわたって実施し、14万8093個のクローンそれぞれを追跡することで、ヒトで見られる7つのHSPCサブタイプの頻度、動態、および出力について包括的な研究を行った。未分化多能性前駆細胞集団と造血幹細胞(HSC)集団は、移植後の再構築開始の間は、その後の定常状態とは異なる役割を担っていることが分かった。さらに、in vitroで活性化されたHSCの一部はレジリエントで、移植の際には活性化時期がはっきり遅くなることが示された。また、我々のデータは、リンパ系に偏った早期の前駆細胞は、HSCからの継続的産生とは無関係に維持されるので、長期にわたる生存が可能であるという説を裏付けている。まとめると、本研究はヒトでの自家移植と遺伝子治療の後のHSPC動態についての包括的なデータを示すものだ。

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