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オピオイドと腸内マイクロバイオーム
Nature Medicine 24, 11 doi: 10.1038/s41591-018-0246-9
米国では成人の11%が慢性疼痛に悩まされているが、こうした痛みを鎮める薬剤の選択肢は限られているため、非常に強力な効果を発揮するオキシコドンのようなオピオイド系鎮痛剤を、多くの医師が処方する。だが、オキシコドンの過剰処方はオピオイド系鎮痛剤に対する嗜癖(依存症)を広げる一因となっていて、米国内では毎日130人以上がオピオイドの過剰摂取で命を落としている。こうした嗜癖につながる要因は多数あるが、研究者の注目を集めているのは、腸内マイクロバイオームの関与である。腸に生息する何兆個もの細菌(マイクロバイオーム)が、うつや不安といった精神状態に影響を及ぼすことが明らかになるにつれて、薬物への嗜癖とのつながりも調べられるようになり、マウスでは長期にわたるオピオイドの投与がマイクロバイオームに変化を引き起こし、これによってオピオイドに対する感受性が低下し、鎮痛に必要な薬の量が増えていくことが分かった。モルヒネによるマイクロバイオーム構成の変化やオピオイドによる腸上皮の構造変化も明らかになりつつある。