利益相反の問題に立ち向かう
Nature Medicine 24, 11 doi: 10.1038/s41591-018-0256-7
米国では、連邦研究費の削減によって公立・私立大学の生物医学研究者たちが大学外からの資金提供に目を向けるようになり、その結果、企業をパートナーとする研究が一気に増加した。このことによって、特に生物医学分野で考えなければならなくなったのが、利益相反という隠れた危険にどう対処するかである。
利益相反がなぜ問題となるかは、患者が絡む臨床研究の場合には比較的分かりやすい。だが、前臨床研究や基礎研究となると、利益相反かどうかの境界線は曖昧になる。しかし、だからといって利益相反が大きな問題にならないというわけではない。そのよく知られている例が、1960年代に製糖業界が砂糖の健康リスクを低く見せかけるために、心疾患の主なリスク要因を脂肪とする研究に資金を提供して、砂糖による影響を覆い隠そうとしたというものだ。この研究は、その後の心血管疾患研究に大きな影響を及ぼすことになった。こうしたことを防ぐために、大学では一般に、基礎科学の研究者と企業の関係を制限するような対策を取っているが、それも完全とは言えないのが現状である。
基礎研究は、それに続いて行われる全ての研究の土台となるものである。創薬の場合は特に、基礎研究で見つかった薬剤候補分子を臨床研究に持ち込む際の資金の出どころと透明性を常に意識していないと、研究者は大変な危険にさらされることがある。本誌の著者および査読者は、金銭的なものであれそれ以外のものであれ、いかなる利益相反についても念入りに検討していただきたい。透明性は研究の完全性を保つのに重要なばかりでなく、基礎研究の資金の大きな部分を支えている納税者の信頼を維持するためにも不可欠である。生物医学の進歩に関わる研究を守り、助成していくために、利益相反の報告のもっと高い透明性を確保するにはどうしたら良いか、我々はこの問題についてのオープンな議論を歓迎する。