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神経変性疾患:C9ORF72に変異を有するALS/FTD患者由来の分化誘導された運動ニューロンではハプロ不全が神経変性につながる

Nature Medicine 24, 3 doi: 10.1038/nm.4490

C9ORF72のイントロンに含まれるGGGGCC反復配列の伸長は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)と前頭側頭型認知症(FTD)の最もよく見られる原因だが、この反復配列が病気を発症させる機構は解明されていない。我々は、分化誘導されたヒト運動ニューロン(iMN)を用いて、ALSでは反復配列が伸長したC9ORF72がハプロ不全であることを見いだした。C9ORF72は運動ニューロンでエンドソームと相互作用し、正常な小胞トラフィッキングとリソソーム生合成に必要であることが分かった。反復配列の伸長はC9ORF72の発現を低下させ、2つの機構を介して神経変性を引き起こした。機構の1つは興奮毒性につながるグルタミン酸受容体の蓄積で、もう1つは反復配列の伸長部分に由来する神経毒性タンパク質DRP(dipeptide repeat protein)の除去障害である。従って、機能獲得機構と機能喪失機構の協働が神経変性を引き起こす。構成的に活性なRAB5、あるいはRAB5エフェクターの化学調節物質を用いてC9ORF72のレベルを回復させたり、その機能を増強したりすると、患者のニューロンの生存が回復し、C9ORF72の機能獲得および機能喪失の両方のマウスモデルで神経変性過程が軽減された。つまり、小胞トラフィッキングの調節によって、C9ORF72の反復配列の伸長が引き起こす神経変性を救済できたことになる。今回の結果は、ALS2FIG4CHMP2BOPTNSQSTM1のまれな変異と組み合わせることで、ALSおよびFTDの発症機構が小胞トラフィッキングに絞られてきたことを明らかにしている。

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