マラリア:マラリア原虫の新規な脆弱部位を標的として感染を防御するヒトモノクローナル抗体
Nature Medicine 24, 4 doi: 10.1038/nm.4512
マラリア感染を防御し、最終的にマラリアを根絶するための有効性の高いワクチン、もしくは抗体の開発が、緊急に必要とされている。今回我々は、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum;Pf)のスポロゾイト周囲タンパク質(PfCSP)に対する複数のヒトモノクローナル抗体を単離したことを報告する。これらのモノクローナル抗体は、弱毒化したPfスポロゾイト(SPZ)全体を使ったワクチン(Sanaria PfSPZワクチン)で免疫した複数の被験者に由来する。このような抗体の1つであるモノクローナル抗体CIS43の受動移入によって、マラリア感染の2種類のマウスモデルで、高レベルの無菌的防御が見られた。CIS43がPfCSPへ結合する際の親和性および化学量論的性質は、反復ドメインを取り囲んで2回の連続的な多価結合事象が起こったことを示している。1番目の結合は、PfCSPのN末端と中央の反復ドメインとの間に位置する独特な「連結部」エピトープに対するものである。CIS43はさらに、PfSPZ上のPfCSPのタンパク質分解による切断を防止した。連結部エピトープと複合体を形成したCIS43抗原結合断片の結晶構造の解析から結合の分子相互作用が決定され、このエピトープのコンホメーションの柔軟性が明らかになり、アスパラギン-プロリン-アスパラギン(NPN)が構造的な反復モチーフであることが突き止められた。マラリアの受動的防御に対するCIS43の高い有効性が実証されたことは、旅行者、軍関係者、また根絶運動へのCIS43の使用可能性を示しており、また次世代の合理的ワクチン設計に使えるPfCSP上の保存された新規の脆弱部位が明らかになった。