高血糖症:肝臓のグルタミナーゼ活性を標的として高血糖症を改善する
Nature Medicine 24, 4 doi: 10.1038/nm.4514
グルカゴンのレベルは恒常的な空腹条件下で上昇し、グリコーゲン分解(glycogenolysis)を加速して肝臓からのグルコース放出を促す。グルカゴンはまた、肝臓でのアミノ酸消費の増加などからの糖新生への流量も増強する。2型糖尿病で起こる肝臓のグルコース産生上昇と空腹時高血糖には、グルカゴンシグナル伝達の調節異常が一因となっている。しかし、グルカゴンが糖新生を促進する機構は、まだ完全には分かっていない。グルカゴンは、主に細胞質と核に存在する標的に影響を及ぼすと広く考えられている。しかし、我々は今回、ミトコンドリアではアナプレロティック経路へのグルタミンからの流量がグルカゴンに依存して増大し、糖新生の際に作られるグルコースの炭素へのグルタミンの寄与を増やすことを見いだした。このグルコース産生増大は、プロテインキナーゼA(PKA)に依存しており、小胞体からのグルカゴン誘導性のカルシウム放出、ミトコンドリアのα-ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ活性化、およびグルタミン分解の増加と関連している。グルタミン代謝の最初の段階を触媒する酵素である肝臓グルタミナーゼ2(GLS2)のレベルが低下したマウスでは、in vivoでグルカゴンが誘導するグルタミンからグルコースへの流量が低下し、GLS2をノックアウトすると、空腹時血漿中グルカゴンおよびグルタミンのレベルの上昇に伴って、インスリン抵抗性状態で空腹時血中グルコースレベルの低下が引き起こされる。ゲノム規模関連解析(GWAS)で見られたように、GLS2領域中のヒトの遺伝的変異は高い空腹時血漿グルコースレベルと関連付けられ、凍結保存したヒトの初代肝細胞ではin vitroで、GLS2のこのような自然な機能獲得型ミスセンス変異がグルタミン分解とグルコース産生の上昇をもたらすことが分かった。これらのデータは、グルタミンからの糖新生の重要性、特にグルカゴンシグナル伝達が増強した病的状態における重要性を明示しているとともに、高血糖症のための新しい治療法候補を示している。