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がん治療:非小細胞肺がんでのEGFRおよびHER2のエキソン20選択的キナーゼ阻害剤の作用機構と臨床活性
Nature Medicine 24, 5 doi: 10.1038/s41591-018-0007-9
上皮増殖因子受容体(EGFR)に変異を有する非小細胞肺がん(NSCLC)で見られる活性化変異のほとんどは、既存のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)に感受性を示すが、EGFRとHER2のエキソン20に変化が生じている一部の変異は本来的な抵抗性を示し、有効となる治療法が存在しない。我々は、エキソン20の変異によって生じる構造変化をモデル化し、有効な阻害剤を突き止める目的で、in silico、in vitroおよびin vivoでの検証を行った。三次元モデリングでは、薬剤結合ポケットのサイズを制約し、大きくて柔軟性のない阻害剤の結合を制限する変化の存在が示された。poziotinibはサイズが小さく柔軟な構造であるため、このような立体構造変化の影響を受けず、EGFRとHER2エキソン20に変異を持つ最もよく見られるがんで有効な阻害剤となることが分かった。poziotinibは、in vitroで、またEGFRあるいはHER2のエキソン20変異型NSCLCの患者に由来する異種移植片モデルやNSCLCの遺伝子改変マウスモデルで、認可済みのEGFR TKIよりも強い活性を示した。第2相臨床試験では、EGFRエキソン20変異型NSCLCでpoziotinibの投与を受けた最初の患者11人について、64%の客観的奏功率が確認された。これらのデータは、poziotinibがEGFRおよびHER2のエキソン20の変異に対して強力な臨床活性を示す阻害剤であることを突き止めたもので、このような変異によって引き起こされる立体構造変化を回避できるようなTKIの分子特性を明らかにしている。