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がん治療:BRCA1/2変異を持つトリプルネガティブ乳がんのBRCAnessサブグループにおけるカルボプラチンの作用:TNT試験

Nature Medicine 24, 5 doi: 10.1038/s41591-018-0009-7

BRCA1/2の生殖細胞系列変異は相同組換え(HR)を損ない、ゲノム不安定性を引き起こすことによって乳がん(生殖細胞系列変異型BRCA1/2乳がん:gBRCA-BC)に罹患しやすくする。HRはプラチナ製剤やPARP阻害剤によるDNA損傷も修復する。トリプルネガティブ乳がん(TNBC)にはBRCA1/2変異を持つ亜集団があり、これらはプラチナ製剤に対する感受性が特に高いと考えられている。「BRCAness」と想定されるサブグループに見られるがん[BRCA1のメチル化、低レベルのBRCA1 mRNA(BRCA1 mRNA-low)、あるいはHR欠損とbasal表現型の変異シグネチャーを持つ腫瘍]もまた、プラチナ製剤に感受性を示す可能性がある。我々は、カルボプラチン、およびカルボプラチンとは作用機作の異なるドセタキセルの有効性について、任意抽出した進行性TNBCの患者での第3相試験(TNT試験)による評価を行った。事前に指定したプロトコルにより、gBRCA-BCサブグループとBRCAnessサブグループにおけるバイオマーカーと治療の相互作用を解析することができた。主要評価項目は奏効率(ORR)とした。任意抽出集団(被験者376人;カルボプラチン188人、ドセタキセル188人)では、カルボプラチンがドセタキセルよりも効果が高いことはなかった(それぞれのORRは31.4%と34.0%、P = 0.66)。対照的にgBRCA-BCの被験者集団では、カルボプラチンのORRは、ドセタキセルの2倍だった(68%に対して33%;バイオマーカーと治療の相互作用と考えられる、P = 0.01)。このような効果は、BRCA1メチル化やBRCA1 mRNA-lowの腫瘍を持つ被験者、あるいはMyriad社HRDアッセイでの高スコアの被験者では見られなかった。治療とbasal-likeサブタイプ間の有意な相互作用は、非basal-likeサブグループのドセタキセルに対する高い応答により生じる。進行したTNBC患者で、プラチナ製剤による化学療法の選択について情報を得るためには、BRCA1/2変異についての検証は有用だが、BRCA1メチル化の検証やMyriad社HRDアッセイは役に立たないと我々は考えている。加えて、basal-likeサブタイプ乳がんの遺伝子発現解析も、治療選択に影響を与えるだろう。

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