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ATR-X症候群:ATR-X症候群のためのDNAグアニン四重鎖を標的とした認知機能改善薬の開発
Nature Medicine 24, 6 doi: 10.1038/s41591-018-0018-6
X連鎖αサラセミア・精神遅滞(ATR-X)症候群は、クロマチンリモデリングタンパク質をコードするATRXに生じた変異によって引き起こされる。マウスおよびヒト細胞でのゲノム規模解析から、ATRXはグアニンに富む塩基配列(グアニン四重鎖を形成する可能性が高い)に結合する傾向があることが示されている。本論文では、Atrxの変異により、マウス脳でXlr3bの異常な発現上昇が誘導され、その結果がATR-Xモデルマウスに見られる神経機能の低下に関連することを報告する。ATRXは本来、インプリント遺伝子であるXlr3bのCpGアイランド内グアニン四重鎖に結合し、その発現をDNAメチルトランスフェラーゼの集積により調節していることが分かった。Xlr3bタンパク質は樹状突起のmRNAと結合し、その過剰発現はCaMKII-αをコードするmRNAの樹状突起への輸送を阻害して、シナプス機能不全を促進する。グアニン四重鎖に結合する代謝産物に変換される5-アミノレブリン酸(5-ALA)をATR-Xモデルマウスに投与すると、RNAポリメラーゼIIの集積が低下して、Xlr3b転写の抑制が引き起こされる。5-ALA投与はまた、ATR-Xモデルマウスに見られるシナプス可塑性の低下や認知障害も改善する。我々の知見から、グアニン四重鎖を標的として、ATR-X症候群に関連する認知障害を軽減する治療戦略候補が考えられる。