糖尿病:肝臓でのフォリスタチンの不活性化は高血糖を軽減する
Nature Medicine 24, 7 doi: 10.1038/s41591-018-0048-0
肝臓でのグルコース産生(HGP)が抑制を受けない状態は、耐糖能異常や糖尿病に大きく関わっており、この状態は肝臓のIrs1(insulin receptor substrate 1)とIrs2の遺伝学的不活性化によりモデル化できる(LDKOマウス)。我々は以前に、LDKOマウスの耐糖能異常は転写因子FoxO1を肝臓で不活性化する(LTKOマウス)と軽快するが、肝臓は依然としてインスリンに対して感受性を示さないことを明らかにした。本論文では、LDKOマウスでは白色脂肪組織のインスリン感受性も障害されているが、LTKOマウスでは回復していて、これと同時にHGPがインスリンによって正常値に抑えられていることを報告する。白色脂肪組織のインスリンシグナル伝達とHGPが肝臓のFoxO1によって調節される仕組みを立証するため、へパトカインと推定されるタンパク質で、LDKOマウスでは調節不全となっているがLTKOでは正常化しているものを特定した。その1つが過剰となっているフォリスタチン(Fst)で、LDKOマウスの肝臓で肝Fstをノックダウンすると、耐糖能、白色脂肪組織でのインスリンシグナル伝達、およびインスリンによるHGP抑制が回復したが、健常なLTKOマウスの肝臓でFstタンパク質を発現させると、これとは逆の影響が見られた。Fstのノックダウンは高脂肪食を与えられた肥満マウスでも耐糖能を改善し、また、糖尿病を発症していて胃バイパス手術を受けた糖尿病の肥満患者では血清Fst量が糖化ヘモグロビン量と並行して低下することが分かったことは、臨床的に重要であろう。我々はFstが病因性のヘパトカインであり、肝臓のインスリン抵抗性が生じた際の糖尿病治療で標的となる可能性があると考えている。