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心疾患:脱チロシン化微小管の抑制はヒト心不全で心筋細胞機能を改善する
Nature Medicine 24, 8 doi: 10.1038/s41591-018-0046-2
脱チロシン化された微小管は機械的抵抗性を生じ、収縮する心筋細胞の動きを妨げることがある。しかし、心不全あるいはヒト心臓での微小管脱チロシン化の機能的影響はこれまで調べられていなかった。今回我々は、質量分析法と単一筋細胞の機械的アッセイを用いて、ヒト心不全の心筋細胞での細胞骨格の変化と、こうした変化から生じる機能的帰結について調べた。左心室組織のプロテオーム解析から、不全化ヒト心臓では中間径フィラメントと微小管の両方に、上方調節と安定化が見られることが明らかになった。超高分解能での画像化によって示されたように、不全化心筋細胞は高密度で脱チロシン化の程度の高い微小管ネットワークを特徴とし、これは筋細胞の硬度の上昇と収縮障害に関連付けられる。脱チロシン化した微小管を薬理学的に抑制すると、不全化筋細胞の粘弾性が低下し、失われた収縮機能の40~50%が回復する。微小管の脱チロシン化を遺伝学的手法によって低下させても、心筋細胞は柔らかくなり、収縮反応の速度論的性質が改善される。まとめるとこれらのデータは、修飾された細胞骨格ネットワークが不全化ヒト心臓中の心筋細胞の収縮機能を妨げることを実証しており、脱チロシン化した微小管を治療標的とすることが心機能改善のための新たな心筋収縮力を変化させる戦略となる可能性を示している。