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眼疾患:目の痒みと痛みの解剖学的および機能的な二分法
Nature Medicine 24, 8 doi: 10.1038/s41591-018-0083-x
痒みと痛みは多くの眼疾患で起こる症状で、治りにくい。眼の痒みは主に結膜で生じ、角膜に生じることはない。対照的に、眼の痛みのほとんどは角膜から生じる。だが、この原因となる機構は分かっていない。我々は、遺伝的軸索追跡法を用いて、結膜と角膜の間には異なる感覚神経分布パターンがあることを見いだした。齧歯類モデルでさらなる遺伝的および機能的解析を行ったところ、眼の痒みを仲介しているのは、MrgprA3の発現を特徴とする結膜選択的な感覚神経繊維のサブセットであって、角膜の感覚神経繊維ではないことが分かった。起痒物質(ヒスタミンと非ヒスタミンの両方)の作用は結膜感覚神経繊維のこの独特なサブセットに収束するため、これらの神経繊維がアレルギー性結膜炎に関連する痒みの仲介に重要な役割を果たすことができる。これは、皮膚の痒み(皮膚では異なる感覚ニューロン集団が協調して痒みを伝える)とは異なっている。また、ナトリウムチャネル遮断薬QX-314が起痒物質の仲介によりニューロンに取り込まれると、結膜の痒みを感知する感覚神経繊維の選択的サイレンシングが起こることは、マウスでの眼の痒みを治療する実現可能な治療戦略の概念実証である。痒みを感知する神経繊維はヒトの結膜にも分布しており、QX-314を用いた薬理学的サイレンシングが可能である。我々の結果は、眼の痒みの神経機構に新たな光を当てるもので、治療戦略開発のための新たな道を開く。