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がん:肺腫瘍微小環境での間質細胞の表現型形成
Nature Medicine 24, 8 doi: 10.1038/s41591-018-0096-5
がん細胞は、間質細胞からなる複雑な生態系である腫瘍微小環境(TME)に埋め込まれている。今回我々は、ヒト肺腫瘍の5万2698個の細胞について、単一細胞レベルの分解能で得たTMEトランスクリプトームカタログ(塩基配列を解読した追加の4万250個の細胞からなる独立したサンプルで検証を行った)を示す。マッチする非悪性の肺サンプルと比較することで、間質細胞を大規模に形成する非常に複雑なTMEが明らかになった。これまでは均一だと考えられてきた細胞タイプで、新規の亜集団を含む52種類の間質細胞サブタイプの存在が突き止められ、それらの不均一性を生み出す転写因子も見つかった。例えば、コラーゲンの多様なセットを発現する繊維芽細胞、免疫細胞のホーミングを抑制的に制御する内皮細胞、よく知られた免疫チェックポイント転写産物と共調節され、T細胞活性と相関する遺伝子などが新たに見つかった。1572人の患者に由来する大規模なRNA塩基配列データ中でこのような細胞サブタイプに対するマーカー遺伝子を評価することで、我々はこれらが生存とどのように相関するかを示し、さらに、選び出したマーカーに対する免疫組織化学的検討を行って、独立した一連の肺腫瘍での個々の細胞を検証した。間質細胞タイプの包括的カタログを示し、それらの表現型と選出された挙動の特徴を明らかにしたこの研究情報源は、肺がんの生物学的性質に対するより深い考察をもたらし、肺がんの診断と治療の進展にも役立つだろう。