Article
がん治療:腫瘍のプログレッションとPD-1チェックポイント阻害の間に肥満がT細胞機能に及ぼす矛盾する影響
Nature Medicine 25, 1 doi: 10.1038/s41591-018-0221-5
最近の免疫療法の成功はがん治療にパラダイムシフトをもたらしたが、免疫療法に応答性を示す患者は全体の数パーセントに過ぎないため、転帰に強い影響を与える因子群を見つけ出すことは喫緊の課題となっている。肥満は世界的な流行病という域に達しつつあり、一部の悪性腫瘍の主要なリスク因子だが、一般的に、またがん免疫療法において、肥満が免疫応答に及ぼす影響についてはほとんど解明されていない。我々は今回、多くの種や腫瘍モデルにわたって、肥満は免疫老化、腫瘍のプログレッション、またPD-1が仲介するT細胞機能障害を引き起こし、少なくともその一部はレプチンによって駆動されることを示す。しかし、肥満は、担がんマウスと臨床でのがん患者の両方でPD-1/PD-L1阻害の効果の増強と関連している。これらの知見は、がんで肥満が引き起こす免疫機能不全とその影響についての解明を進め、肥満が一部のがんの免疫療法のバイオマーカーであることを明確にしている。これらのデータは、肥満ががんに相矛盾する影響を及ぼすことを示している。肥満の際に活性化される複数の経路を直接的に標的とするチェックポイント阻害の後には、免疫機能不全や腫瘍のプログレッションが亢進するだけでなく、より強い抗腫瘍効果と生存も引き起こされるのである。