Article

神経変性疾患:神経変性性認知症に関与する進化的に保存された遺伝子ネットワークの特定

Nature Medicine 25, 1 doi: 10.1038/s41591-018-0223-3

遺伝学的リスクによって認知症が発症する機構の解明は、新たな治療法を開発する上で必須である。本研究では、前頭側頭型認知症の発症機構を解明するために、多角的なシステム生物学の手法を用いた解析を実施した。その結果、MAPTGRNなどの認知症関連変異を有する多様な遺伝学的背景のマウスで保存されている、2つの遺伝子共発現モジュールが見つかった。我々は、ヒト脳から得られたプロテオームとトランスクリプトームのデータを統合することにより、種差を越えて進化的に保存された疾患関連ネットワークを特定した。調節性マイクロRNA(miRNA)モジュールのハブと推定されるmiR-203の過剰発現は、疾患状態と関連したmRNA共発現パターンを再現し、ニューロンの細胞死を誘導した。この結果から、このmiRNAが神経変性の調節因子であることが明らかになった。我々はさらに、薬剤による遺伝子発現変化のデータベースを用いて、この疾患関連モジュールを正常化する低分子化合物を特定し、これを実験的に検証した。今回の結果は、薬剤探索を行うのに統合的な異種間のネットワークを用いる手法が有用であることを明らかにしている。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度