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がん:WASPはT細胞リンパ腫での腫瘍抑制因子である
Nature Medicine 25, 1 doi: 10.1038/s41591-018-0262-9
Wiskott–Aldrich syndrome protein(WASP)とWASP-interacting-protein(WIP)は、Tリンパ球でT細胞抗原受容体(TCR)シグナル伝達を調節しているが、リンパ腫で果たしている役割についてはほとんど知られていない。今回我々は、未分化大細胞型リンパ腫(ALCL)では、WASPとWIPの発現が他のT細胞リンパ腫と比べて低かったり、あるいは欠如していたりすることを示す。ALK+(anaplastic lymphoma kinase-positive)ALCLでは、WASPとWIPの発現はALK下流のメディエーターであるSTAT3およびC/EBP-βを介してALK発がん活性により調節される。WASP欠損マウスとWIP欠損マウスでは、ALK+リンパ腫の進行が促進された。WASPがない場合は、GTPが結合した活性型CDC42が増加し、CDC42対立遺伝子の1つを遺伝的に欠損させるだけで、リンパ腫増殖が障害された。WASP欠損リンパ腫は、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)経路の活性化が亢進していて、これは治療に際して脆弱性として利用できる可能性がある。我々の知見は、WASPとWIPがT細胞リンパ腫で腫瘍抑制因子として働いていることを実証したもので、MEK(MAP-kinase kinase)阻害剤とALK阻害剤との併用はALK+ ALCLでより強力な治療効果を発揮すると考えられる。