神経繊維腫症:神経繊維腫症1型患者でのグリオーマの分子的全体像
Nature Medicine 25, 1 doi: 10.1038/s41591-018-0263-8
神経繊維腫症1型(NF1)はよくある腫瘍傾向症候群で、グリオーマ(神経膠腫)はこの症候群で広く見られる腫瘍の1つである。NF1でグリオーマが形成されると、患者の一生を通じて低悪性度から高悪性度まで不均一な広がりを見せる新生物が生じる。NF1患者に生じるグリオーマの遺伝的変化やエピジェネティックな変化のパターン、また散発性グリオーマとの類似性は分かっていない。我々は今回、NF1患者での低悪性度および高悪性度のグリオーマ(NF1-グリオーマ)の分子的全体像を示す。NF1遺伝子の腫瘍の素因となる生殖細胞系列変異はホモ接合性に変換されることが多く、NF1-グリオーマの体細胞変異負荷は年齢や悪性度の影響を受けることが分かった。高悪性度の腫瘍には、TP53やCDKN2Aの遺伝的変化、Alternative Lengthening of Telomere(ALT)に関連するATRXの頻発型変異があり、また、転写/クロマチンの調節経路やPI3キナーゼ経路の遺伝的変化が多く見られた。低悪性度の腫瘍には、MAPキナーゼ経路の遺伝子群に多く見られる変異が少なかった。低悪性度のNF1-グリオーマの約50%は、T細胞の浸潤という免疫シグネチャーやネオアンチゲン負荷の上昇を示した。DNAメチル化により、NF1-グリオーマはLGm6サブグループに割り付けられた。LGm6は、よく分かっていないが、Isocitrate Dehydrogenase 1が野生型のサブグループで、ATRX変異が多数見られる。従って、NF1-グリオーマのプロファイリングによって、散発性腫瘍のサブセットの1つを再現する独特な全体像が明らかになった。