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乳がん:集団ベースの臨床研究で行われたトリプルネガティブ乳がんの全ゲノム塩基配列解読

Nature Medicine 25, 10 doi: 10.1038/s41591-019-0582-4

全ゲノム塩基配列解読(WGS)は、がんゲノムの解釈についての包括的な手掛かりをもたらす。WGSの臨床的価値を調べるために、我々は254例のトリプルネガティブ乳がん(TNBC)の塩基配列解読を行った。これらの症例については、集団ベースのSCAN-B(Sweden Cancerome Analysis Network-Breast)プロジェクト(ClinicalTrials.gov ID;NCT02306096)を介して2010〜2015年に集められた関連する治療と転帰についてのデータがある。HRDetectという変異シグネチャーベースのアルゴリズムを適用して腫瘍を分類すると、59%が相同組換え修復欠損を持つ(HRDetect-high)と予測された。67%はBRCA1/BRCA2の生殖細胞系列/体細胞性の変異、BRCA1プロモーターの過剰メチル化、RAD51Cの過剰メチル化、もしくはPALB2の両対立遺伝子性欠損によって説明された。BRCA1破壊の新しい機構が、生殖細胞系列のSINE-VNTR-Aluレトロトランスポジションを介して見つかった。HRDetectにより独立した予後情報が提供され、HRDetect-highの患者は、遺伝的原因やエピジェネティックな原因が見つかったかどうかにはかかわらず、補助化学療法の転帰が、無浸潤疾患生存期間〔ハザード比(HR)= 0.42、95%信頼区間(CI)= 0.2~0.87〕および無遠隔再発期間(HR = 0.31、CI = 0.13~0.76)について、HRDetect-lowの患者と比べると良好だった。HRDetect-intermediateの患者の一部は標的にできる可能性のある生物学的異常を持つが、転帰は最も不良だった。HRDetect-lowのがんも転帰は十分よいとはいえず、約4.7%はミスマッチ修復欠損(また別の標的とし得る異常、通常は探索されない)であり、PIK3CA/AKT1経路の異常が多く見られた(ただし、異常はこれに限定されるわけではない)。今回識別可能となったHRDetect-intermediateとHRDetect-lowのカテゴリーに対しては、新しい治療選択肢を検討する必要がある。集団ベースの今回の研究は、TNBCのWGSが試験を層別化するよりよい情報を提供し、臨床での意思決定を改善することを裏付けている。

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