ウイルス感染症:汎ウイルス血清学的検査によって立証された急性弛緩性脊髄炎へのエンテロウイルスの関わり
Nature Medicine 25, 11 doi: 10.1038/s41591-019-0613-1
2012年以来、米国では2年ごとに小児の急性弛緩性脊髄炎(AFM)が急増している。疫学的な証拠は、非ポリオエンテロウイルス(EV)が病因である可能性を示唆しているが、EVのRNAが脳脊髄液(CSF)中で検出されることは滅多にない。我々は、AFM罹患者(42名)および対照として他の小児神経疾患の患者(58名)から得られたCSFについて、髄腔中の抗ウイルス抗体を、全ての既知の脊椎動物およびアルボウイルスに由来する48万1966個のペプチド(重複している)を発現するファージディスプレイライブラリーを使って調べた(VirScan)。また、AFM患者のCSF由来のRNA(20症例)については、メタゲノムの次世代塩基配列解読法(mNGS)として、バイアスなしの塩基配列解読とEVに対するtargeted enrichmentシステムによる解読の両方を行った。VirScanを使って、AFM症例のCSFで有意に増加していたウイルスファミリーはピコルナウイルス科であり、ピコルナウイルス科のペプチドで最も多かったのはエンテロウイルス属のものだった(42症例中29例であったのに対して、対照では58症例中4例)。EV VP1(viral protein 1)のELISAによって、これらの知見が確認された(26症例中22例に対して、対照では50症例中7例)。mNGSでは、この他のEV RNAは検出されなかった。EV RNAの検出がまれであったのにもかかわらず、汎ウイルス血清学的検査では、AFMのCSF中では、対照と比べると高レベルのEV特異的抗体が検出され、AFMでは非ポリオEVが原因であることを示すさらなる証拠が得られた。