治療:ABACUS臨床試験における手術可能な尿路上皮がんでのネオアジュバント療法アテゾリズマブの臨床効果とバイオマーカー解析
Nature Medicine 25, 11 doi: 10.1038/s41591-019-0628-7
PD-1、あるいはそのリガンドであるPD-L1を標的とするアテゾリズマブなどの抗体は、転移性尿路上皮がんの一部に対して高い有効性を示す。バイオマーカーはこのような応答性腫瘍の識別を容易にする可能性がある。これらの薬剤のネオアジュバント療法への使用は、尿路上皮がんを含む一連の腫瘍での病理学的完全奏効と関連付けられている。このような研究で行われた一連の組織サンプリングによって、バイオマーカーの詳細な解析が治療中に行えるようになった。本論文では、筋層浸潤性尿路上皮がんの患者95名で膀胱摘除前の2サイクルのアテゾリズマブ投与について調べる単群第2相試験(ClinicalTrials.gov識別番号:NCT02662309)について報告する。主要評価項目は病理学的完全奏効、副次的評価項目は安全性、無再発生存およびバイオマーカー解析に絞り込んだ。病理学的完全奏効率は31%(95%信頼区間は21-41%)で、主要有効性評価項目を達成した。ベースラインのバイオマーカーによって、既存の活性化T細胞の存在が予想よりも顕著であり、転帰と相関していることが明らかになった。腫瘍組織中の遺伝子変異量などのすでに確立されている他のバイオマーカーは転帰を予測せず、これは転移の場合とは異なっている。遺伝子発現シグネチャーやタンパク質バイオマーカーには治療に伴って大きな変化が生じたが、一方で治療に伴うDNA異常の変化はあまり見られなかった。応答性の腫瘍では、組織修復に関連する遺伝子の治療後の顕著な発現が明らかになり、このグループでは、腫瘍バイオマーカーの解釈が困難である。トランスフォーミング増殖因子βや線維芽細胞活性化タンパク質などの間質因子は、細胞周期関連遺伝子の治療後の高発現というシグネチャーと同じく、抵抗性と関連していた。