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脳卒中:中国人成人での虚血性脳卒中および脳内出血のリスクと血中脂質との因果関係

Nature Medicine 25, 4 doi: 10.1038/s41591-019-0366-x

脳卒中は世界の死亡原因の第2位で、中国では脳卒中による死亡者数が毎年200万人を超えている。中国では、虚血性脳卒中(IS)の発生率は脳内出血(ICH)の4倍であるにもかかわらず、ISとICHによる死亡者数はほぼ同じである。中国人集団での低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)の平均濃度は西洋人集団より低いにもかかわらず、中国での脳卒中発生率やICHの割合は西洋人集団より高い。観察研究では、LDL-CとISの正の関連はLDL-Cと冠動脈心疾患(CHD)の間の正の関連よりも弱いことが報告されているが、臨床試験ではLDL-Cを低下させると、ISとCHDのリスクは同じように低下することが明らかになっている。LDL-CとISについてのメンデルランダム化試験からは矛盾する結果が報告されていて、LDL-Cの低下に関連するICHのリスクが過剰なのではないかという懸念が、中国でスタチンがもっと広く使用されるのを妨げている可能性がある。我々は、中国Kadoorieバイオバンク(CKB)でのコホート内症例対照研究で生化学的に測定された複数の脂質測定値と脳卒中の関連を調べて、メンデルランダム化解析でLDL-Cの等量の変化とこの2つのタイプの脳卒中のリスクの関連性を比較した。その結果、LDL-CとISの間には正の関連があり、LDL-CとICHの間には同程度の強さの逆相関が見られることが実証され、これらの結果は遺伝的解析やLDL-Cを低下させる臨床試験によって確認された。中国では、LDL-Cの低下は、脳卒中や心血管疾患全般の予防に依然として正味の利益をもたらすだろうと考えられる。

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