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ニューロン異所形成:ニューロン異所形成症患者に由来するヒト脳オルガノイドで見られたニューロンの移動軌跡の変化

Nature Medicine 25, 4 doi: 10.1038/s41591-019-0371-0

ヒト脳皮質の奇形は障害の主要な原因である。既知の原因遺伝子に変異が生じているマウスモデルでは表現型が部分的にしか再現されないので、このような病態の原因となる分子機構や細胞機構を解明するのに適しているとはいえない。今回我々は、カドヘリン受容体–リガンド対のDCHS1FAT4に変異を持つ患者の誘導多能性幹細胞(iPSC)、あるいは同系ノックアウト(KO)株のiPSCから作製した脳オルガノイドの解析を行い、脳室周囲異所性灰白質(PH;periventricular heterotopia)について調べた。これらのヒト脳オルガノイドは、PHと関連した皮質異所形成を再現することが分かった。DCHS1FAT4の変異、もしくはそれらの発現のノックダウンは神経前駆細胞の形態に変化を引き起こし、その結果としてニューロンの1つのサブセットでだけ移動動態の異常が生じた。単一細胞RNA塩基配列解読(scRNA-seq)データから、軸索誘導やニューロンの移動、パターン形成に関わる遺伝子の調節異常を示す変異型ニューロンのサブ集団が明らかになった。従って、ニューロンのサブセットの1つでの神経前駆細胞(NPC)の異常な形態と誘導系の変化が、この型のPHの原因となっていると考えられる。

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