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ニューロン新生:成体海馬ニューロン新生は神経学的に健常な実験参加者では盛んに起こるが、アルツハイマー病患者では急激に減少する
Nature Medicine 25, 4 doi: 10.1038/s41591-019-0375-9
海馬は、アルツハイマー病(AD)で最も大きな影響を受ける領域の1つである。さらに、海馬では哺乳類の成体脳で見られる最も独自性の高い現象の1つ、すなわち新しいニューロンの付加が一生を通じて続いている。この過程は成体海馬ニューロン新生(AHN)と呼ばれ、海馬回路全体の可塑性を並外れて高いものにしている。にもかかわらず、AHNが起こっていることの直接的証拠は、ヒトではまだはっきり示されていない。従って、新生ニューロンが生理的および病理的な加齢の間にヒトの歯状回(DG)に絶え間なく組み入れられているのかどうかを明らかにすることは重要な問題であり、治療に大きく役立つ可能性がある。我々は、厳密に管理された条件下で採取されたヒト脳試料と、最先端の組織処理法を組み合わせて、90歳までの神経学的に健常な実験参加者のDGで数千個の未成熟なニューロンを明らかにした。これらのニューロンは、AHNの分化段階に応じて成熟度もさまざまであった。これとは対照的に、このようなニューロンの数と成熟度はADの進行とともに徐々に低下した。これらの結果は、AHNがヒトの生理的および病理的な加齢の間にずっと継続して起こっていることを実証するものであり、ニューロン新生の障害がADでの記憶障害の基盤となる機構と関連しているらしいことを証拠立てている。この機構は新たな治療戦略の標的となる可能性がある。