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肝疾患:血小板GPIbαはNASHとそれに続く肝臓がんのメディエーターであり、また介入標的候補である
Nature Medicine 25, 4 doi: 10.1038/s41591-019-0379-5
非アルコール性脂肪性肝疾患は、脂肪症から非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)へと変化し、さらに肝硬変や肝細胞がん(HCC)に進行する可能性がある。今回我々は、NASHでは血小板数、血小板活性化、および血小板凝集が増加するが、脂肪症あるいはインスリン抵抗性ではこれらの増加が見られないことを示す。抗血小板治療(APT;アスピリン/クロピドグレル、チカグレロル)は、NASHとそれに続くHCCの発症を防止するが、スリンダクを用いる非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)投与では発症は防止されなかった。生体顕微鏡を使って、血小板の肝臓定着はNASHの初期および後期段階ではクッパー細胞に主に依存していて、ヒアルロン酸–CD44結合がそれに関与していることが明らかになった。APTは血小板の肝臓内蓄積と血小板–免疫細胞間の相互作用の頻度を低下させ、それによって肝臓免疫細胞の移動を制限する。その結果、肝臓内でのサイトカインとケモカインの放出、大滴脂肪症、および肝障害が減弱した。血小板の積み荷、血小板接着、および血小板活性化はNASHとそれに続く肝臓がん発生に不可欠だが、血小板凝集はそうでないことが明らかになった。特に、血小板由来GPIbαは、NASHとそれに続くHCCの発症に極めて重要だが、その同族リガンドであることが報告されているvWF、P-セレクチン、もしくはMac-1は無関係であることは、血小板由来GPIbαがNASHに対する標的候補であることを示している。