がん/マイクロバイオーム:大腸がんデータセットのメタゲノム解析によって見つかったコホート横断的な微生物による診断マーカーとコリン分解とのつながり
Nature Medicine 25, 4 doi: 10.1038/s41591-019-0405-7
腸内マイクロバイオームと大腸がん(CRC)の間のつながりを解析した研究はすでに複数あるが、コホートや対象集団を横断するバイオマーカーの再現性については疑問が残っている。我々は、利用可能な5つの公開データセットと2つの新たなコホートを用いてメタ解析を行い、得られた知見についてさらに2つの追加コホートで検証し、合計で969の糞便メタゲノム解析について検討した。消化器疾患と関連したマイクロバイオームの変化とは異なり、CRCの腸内マイクロバイオームは、対照群よりも高い豊かさ(P < 0.01)を持つことが高い再現性で示され、これは部分的には、通常は口腔に由来する細菌種の増殖によるものだった。マイクロバイオームの機能的潜在能力のメタ解析から、糖新生や腐敗・発酵経路はCRCと関連しており、スタキオースやデンプンの分解経路は健常者群と関連することが明らかになった。複数のデータセットで学習させたCRCに対するマイクロバイオームの予測マーカー(シグネチャー)は、モデル学習に用いていない無関係な検証コホートのデータセットで常に高い正確度を示した[平均曲線下面積値(AUC)は0.84]。未加工メタゲノムのプール解析からは、CRCではコリントリメチルアミンリアーゼ遺伝子が過剰に存在することが分かり(P = 0.001)、マイクロバイオームのコリン代謝とCRCとの関連性が示された。従って、複数のCRCコホートに対して我々が行った複合解析によって、マイクロバイオームの再現性のあるバイオマーカーと正確な疾患予測モデルが明らかになり、これらは臨床予後検査や機序を解明する仮説駆動型研究に対する基盤を構築できる。