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白血病治療:WT1を標的としたT細胞受容体遺伝子治療は急性骨髄性白血病の移植後再発を防ぐ

Nature Medicine 25, 7 doi: 10.1038/s41591-019-0472-9

同種造血細胞移植(HCT)後の再発は、危険性の高いHCTを施行した急性骨髄性白血病(AML)患者の主たる死亡原因である。HCTによって無再発生存が延長されるのは、白血病細胞上の抗原と反応するドナーT細胞によって引き起こされる移植片対白血病効果の現れであることが多い。移植片中のT細胞は、白血病に対する特異性によって選択されたものではなく、多数の正常宿主組織が発現するタンパク質を認識することが多いため、移植片対白血病効果は移植片対宿主病による症状や死を伴うことが多い。従って、AML再発のリスクは、選択されたAML抗原を標的とする受容体(TCR)を発現するT細胞を用いることでより効率よく低下する可能性がある。そこで我々は、移植片対宿主病のリスクを最小限にして、移入したT細胞の生存を促進させるために、まずHLA-A2+正常ドナーのレパートリーから高親和性WT1(Wilms' Tumor Antigen 1)に特異的なTCR(TCRC4)を単離し、TCRC4をエプスタイン・バーウイルス特異的ドナーCD8+ T細胞(TTCR-C4)に導入してから、HCT後の12名の患者にこれらの細胞を予防的に投与した(NCT01640301)。無再発生存率は、投与後の44か月期間の中央値で100%であったのに対し、AMLのリスクが同程度の88名の患者からなる、同時に設定した比較対照群の無再発生存率は54%であった(P = 0.002)。TTCR-C4では、TCRC4の発現が維持され、長期間生存して多機能性であった。この方法は、HCT後再発のリスクが上昇した患者でAML再発を防ぐのに有望であると考えられる。

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