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微生物相:一流運動選手のメタオミクス解析で見つかった乳酸代謝を介して作用し成績を向上させる微生物

Nature Medicine 25, 7 doi: 10.1038/s41591-019-0485-4

ヒトの腸マイクロバイオームは、ヒトの健康や疾患の多くの状態に関連している。腸マイクロバイオームの代謝レパートリーは膨大だが、これらの細菌関連経路と健康との関係についてはよく分かっていない。我々は、ヴェイオネラ属(Veillonella)の細菌と運動成績との間のつながりを明らかにした。マラソン走者では、マラソン後にヴェイオネラ属類縁種の存在量が増加し、我々は糞便試料からVeillonella atypica株を単離した。この単離株をマウスに接種すると、疲労困憊に至るトレッドミル運動での走行時間が大幅に伸びた。ヴェイオネラ属は乳酸を唯一の炭素源として用いることから、我々は一流運動選手のコホートでショットガンメタゲノム解析を行い、乳酸をプロピオン酸に代謝する主要経路のあらゆる遺伝子の相対的存在量が、運動後に高くなっていることを見いだした。マウスで13C3標識した乳酸を用いて、血清中の乳酸が上皮障壁を通過して腸管内腔へ入ることが実証された。また、プロピオン酸の直腸内注入だけで、V. atypicaの強制投与で観察されたトレッドミル走行時間の成績向上を再現することができた。以上から、今回の研究は、V. atypicaが運動により生じた乳酸をプロピオン酸へと代謝的に変換することでトレッドミル走行時間を改善させることを明らかにしており、これによってマイクロバイオームによってコードされ、運動選手の成績を向上させる天然の酵素過程が突き止められた。

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