Letter
動脈疾患:Million Veteran Programで施行された末梢動脈疾患についてのゲノム規模関連研究
Nature Medicine 25, 8 doi: 10.1038/s41591-019-0492-5
末梢動脈疾患(PAD)は、心血管疾患の罹患や死亡の主たる原因である。しかし遺伝的要因がPADのリスクをどの程度増加させているのかについては、ほとんど分かっていない。我々は、Million Veteran Programの一環として、欧州系、アフリカ系およびヒスパニック系の祖先を持つ退役軍人から得たほぼ3200万個のDNA配列バリアントとPAD(PAD患者3万1307人と対照21万1753人)の関連について、電子カルテデータを用いてゲノム規模関連研究を行った。この結果は、UK Biobankから得た、これとは無関係の5117のPAD症例と38万9291の対照からなる試料でも再現された。19のPAD関連遺伝子座が見つかり、そのうちの18個はこれまで報告されていなかったものである。19の遺伝子座のうちの11個は、3種類の血管床(冠動脈、脳、末梢の血管床)での疾患に関連しており、その中にはLDLR、LPL、LPAが含まれ、このことは低密度リポタンパク質コレステロール、リポタンパク質リガーゼ経路もしくは循環血中リポタンパク質量を調整する治療が、複数のアテローム性疾患表現型に有効である可能性を示唆している。これとは逆に、バリアントのうちでF5 p.R506Qを含む4つはPADに特異的のように見え、末梢血管床での血栓症の病因的役割を明示しており、Xa因子の阻害がPADの治療戦略となることの遺伝学的裏付けが得られた。今回の結果は、冠動脈、脳および末梢で起こるアテローム性動脈硬化の発生機序の類似点と相違点をはっきりと示しており、これらの治療についての手掛かりをもたらす。