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臨床研究にも浸透してきた単一細胞塩基配列解読法
Nature Medicine 25, 9 doi: 10.1038/d41591-019-00017-6
単一細胞ゲノミクス技術を用いて健康なヒトの体を構成する全ての種類の細胞の地図を作ることを目的とする「ヒト細胞アトラス(HCA)」計画は38に上る国際研究グループが参加して、現在進行中である。細胞レベルで見た「健康」なヒト像を表すこのアトラスは、創薬や疾患の予測や予防のための貴重なリファレンスとなるだろう。ほんの10年ばかり前、がんで変異している遺伝子や炎症を起こした臓器で発現している遺伝子を調べるには、1度に採取した多数の細胞集団から得た遺伝情報を解析するしかなかった。そうして得たデータは有用ではあるが、平均のデータでしかない。1個の細胞の塩基配列解読の必要性が高まるのに応じて単一細胞塩基配列解読法は急速に進歩し、実にさまざまな使い方をされるようになった。現在では、この手法が使われていない臨床研究を見つける方が難しいかもしれない。例えば、疾患細胞と正常な細胞とのわずかな違いが明らかになれば、がんの診断、薬剤に対する応答、薬剤標的候補の発見から併用療法の選択法などに非常に役立つのである。