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公衆衛生:MORDOR Iでの腸マイクロバイオームの変化:アジスロマイシン集団投与のコミュニティー無作為化試験

Nature Medicine 25, 9 doi: 10.1038/s41591-019-0533-0

ニジェールやマラウイ、タンザニアで行われたMORDOR I試験は、就学前の児童へのアジスロマイシン集団投与が幼児の死亡率を低下させることを明らかにした。しかし、この試験は大規模であるが、設計が単純であったために、この低下がどのような機序で起こったのかを明らかにすることができなかった。本論文では、ニジェールの30のコミュニティーの就学前児童を、半年ごとにアジスロマイシンあるいはプラセボを投与する群に無作為に割りつけ、その腸マイクロバイオームを調べた。腸マイクロバイオームのγ多様性には有意な変化がなかったが(P = 0.08)、2種のカンピロバクターの相対的存在量が、他の33の腸内細菌とともに、アジスロマイシン投与を受けた児童で経過観察24か月目に有意に減少した。メタゲノム解析によって、投与グループ間での腸内細菌の機能的な差異が明らかになった。レジストーム解析では、アジスロマイシン投与を受けたコミュニティーでは腸内細菌でのマクロライド耐性遺伝子発現が増加していることが分かった(P = 0.004)。これらの結果は、幼児の死亡率低下を目的とした長期にわたるアジスロマイシン集団投与は、既知の病原体を含む一部の腸内細菌を減少させる一方で、抗生物質耐性に対する選択を生じさせることを示唆している。

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