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自己免疫疾患:多発性硬化症患者では単一のT細胞エピトープがナタリズマブに対する抗薬剤中和抗体応答を誘導する

Nature Medicine 25, 9 doi: 10.1038/s41591-019-0568-2

α4インテグリンに対するヒト化モノクローナルIgG4抗体であるナタリズマブ(NZM)は、再発寛解型多発性硬化症(MS)患者の治療に使われるが、約6%の症例で持続性の抗薬剤中和抗体(ADA)が誘導され、これが治療の中断につながる。ADA応答の基盤とADAが関わる中和の機構を理解するために、我々は、2人の患者でB細胞応答とT細胞応答の詳細な解析を行った。多様なNZM特異的モノクローナル抗体の特徴付けによって、両方の患者でその応答がポリクローナルであり、NZMイディオタイプの多様なエピトープを標的にしていることが分かった。この中和活性は体細胞変異を介して獲得され、ゆっくりした解離速度と相関しており、この知見は構造データによって裏付けられた。患者の両方でCD4+ T細胞応答の解析を質量分析法に基づくペプチドミクスと組み合わせることで、NZM軽鎖のFR2-CDR2領域にわたる単一の免疫優勢T細胞エピトープが明らかになった。さらに、NZMのCDR2修飾型はT細胞によって認識されないが、その一方で、α4インテグリンに対する結合性は維持されていた。まとめると、我々の統合解析は、ADAを介する治療抵抗性につながるT-B協働作用の基盤を明らかにしており、また自己免疫疾患とがんの治療のための新たな脱免疫化抗体を設計するための方法を示している。

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