細胞治療:ステロイド抵抗性急性移植片対宿主病でのiPSC由来間葉系間質細胞の製造、安全性、有効性:第I相多施設非盲検用量漸増試験
Nature Medicine 26, 11 doi: 10.1038/s41591-020-1050-x
ドナー由来の間葉系間質細胞(MSC)の治療的有効性は、ステロイド抵抗性急性移植片対宿主病(SR-aGvHD)などの多様な疾患で調べられている。しかし、従来の製造手法は、スケーラビリティーとドナー間でのばらつきという難問が障害となっていて、臨床試験での結果には一貫性が見られない。誘導多能性幹細胞(iPSC)は、多数の細胞系譜への分化能と無限の増殖能を持つので、このような難問を克服できる可能性がある。にもかかわらず、iPSC由来細胞についてこれまで行われたヒト臨床試験で完了したものはない。CYP-001(iPSC由来MSC)は、最適化されたGMP(good manufacturing practice)に準拠した製造過程により作製されている。我々は、SR-aGvHD患者を被験者として第1相非盲検臨床試験(no. NCT02923375)を実施した。スクリーニングにより選ばれた16人が、コホートAあるいはコホートBに順番に割り当てられた(グループ当たりn = 8)。コホートBの1人がCYP-001治療開始前に脱落し、解析から除外された。他の全ての被験者は、0日目と7日目にCYP-001の静脈内注入を受け、投与量のレベルは、体重1 kg当たりの細胞数が1 × 106個から、1回の注入当たりの細胞数が最大で1 × 108個(コホートA)、あるいは体重1 kg当たりの細胞数が2 × 106個から、1回の注入当たりの細胞数が最大で2 × 108個(コホートB)であった。主要目的はCYP-001の安全性と認容性の評価で、副次的目的は、28日目までと100日目までの完全奏功(CR)、全奏功(OR)、全生存(OS)を示した被験者の割合に基づく有効性評価であった。CYP-001は安全で、認容性は良好であった。100日目までのOR率は86.7%、CR率は53.3%、OS率は86.7%であり、CYP-001に関連する重大な有害事象は認められなかった。この結果により、iPSC由来MSCの治療への適用は今後、さまざまな炎症性疾患および免疫介在性疾患で調べられるようになるだろう。