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腸マイクロバイオーム:生後1年間に起こる腸内マイクロバイオームの成熟は、小児喘息を防ぐ農場効果に寄与する
Nature Medicine 26, 11 doi: 10.1038/s41591-020-1095-x
農場での成長は喘息予防効果と結び付けられているが、この効果の基盤にある機序はほとんど知られていない。PASTURE(Protection against Allergy: Study in Rural Environment)出生コホートで、我々は生後2~12か月の幼児のヒト腸内マイクロバイオームの成熟を16S rRNAの塩基配列解読データを使ってモデル化した。12か月齢の幼児での推定マイクロバイオーム年齢(EMA)は、これまでの農場環境への曝露[β = 0.27(0.12~0.43)、P = 0.001、n = 618]や学齢時の喘息リスクの低下[オッズ比(OR)= 0.72(0.56~0.93)、P = 0.011]と関連していた。EMAは農場による防御効果の19%までを仲介していた。我々はコホート内症例対照研究(nested case-control study)の検体(n = 138)で、糞便中酪酸塩の測定値[OR = 0.28(0.09~0.91)、P = 0.034]や酪酸塩産生を予測する細菌群(OR = 0.38(0.17~0.84)、P = 0.017)、酪酸代謝の主要な酵素である酪酸コエンザイムA(CoA):酢酸CoAトランスフェラーゼをコードする遺伝子の相対的な豊富さ〔OR = 0.43(0.19~0.97)、P = 0.042)が、喘息と逆相関していることを見いだした。腸内マイクロバイオームは、代謝産物を介して喘息予防に関わっていると推定され、ヒトでの腸–肺軸の存在という考え方が裏付けられた。